2015年12月11日

【建物進行中など】35_それぞれの暮らし方にふれてみる その1


「ばり研通信」178号(2015年9月末発行)の私の連載より、一部、修正して掲載してます。「ばり研」(=ノイエ)は、http://blog.goo.ne.jp/neue-blogです。

 今号から、連載の原点思い出しまして、車いすを使用している方などの住まいや暮らし方を、少しずつ紹介させていただこうと思います。暮らし方も人それぞれにあることが、読む方に伝わればと考えています。初回はノイエメンバーのAさんです。自宅ではご家族と2階!で生活している…とのことで、その工夫している住まい方などを取材させていただきました。目
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s151211a.jpg Aさんの自宅へは、最寄り駅のJR指扇駅から歩いて向かいながら、駅から自宅への途中の様子なども取材します。指扇駅は昨年度に改修が完了して、エレベーターや車いす対応トイレなどを完備した、新しい橋上駅舎になりました。Aさんは駅員さんとの付き合いも長いそうで、取材の日は私の介助で駅へ降りたことを、後で駅員さんから、ホームへの迎えを忘れてしまったかと、心配して話しかけられたそうです。
 駅前には駅前広場が整備され歩道も広いです。ですが、お店は数軒の飲食店やコンビニぐらいしか無いので、Aさんは指扇で寄り道はあまりせず、買い物は大宮などで済ましてくるそうです。

s151211b.jpg 駅から自宅までは、歩いて15分ほどの距離があります。途中に通る道は、2車線の表通りは歩道が狭く進みづらいため、車のあまり通らない住宅街の裏道をなるべく進みます。それでも途中、表通りを通らないといけない区間がありますが、交通量が多いにもかかわらず白線表示のみの歩道は狭く、後ろから車にぶつけられそうです。さらに、片輪は側溝の上を常に進まねばならず、ガタガタと凸凹を進む状態です。
 自宅近くでまた住宅街の裏道に入りますが、片側が擁壁だったり街灯が少なかったりで夜は怖そうです。このようなこともあって、最近は駅までは車で送り迎えをしてもらうことが多いそうです。晴れ

s151211c.jpg 自宅は2階建ての戸建住宅ですが、住み始める時に、当時まだ小さかったAさんでも生活しやすいようにと、将来まで考えて様々な改修をしたそうです。
 道路から玄関まではスロープになっていて、Aさん一人で玄関まで入れます。ですがこの時は、私が待っていたので、お母さんに押してもらった写真になってしまいました…。以前は道路と敷地内には3段ほど段差があったそうですが、道路が工事でかさ上げされたため、その時にスロープに改修したそうです。

 門は横スライドで広く開くタイプです。玄関も最近の住宅と比べると寸法に余裕があり、玄関ドアの幅は大きく、玄関土間も広めなので、車いすのまま玄関に入るだけのスペースが十分あります。そのため、Aさんは一人で玄関を開けて中に入り、玄関框に車いすを寄せて、一人で車いすから降りて家に上がることができます。
 ですが、Aさんの車いすや、外出時に使うものなどを置いておくスペースは無いので、これらは車庫の車の中に置いているそうです。現実には、家からは車で出かけることが多いので、その方が便利だそうです。車(セダン)

s151211d.jpg 家の中では、Aさんは正座姿勢の四つ這いで移動しています。Aさんと家族は2階で生活しているので、Aさんは専用の階段を一人で上がって2階へ行きます。改修の時に、どうしたら上がれるかを、大工さんと試行錯誤して造った階段だそうです。階段は、一段ごと正座で乗れるように、踏面33cm+蹴込4cmくらいで広いです。蹴上は19cmほどで普通の階段と同じですが、このぐらいの段差が、Aさんが手で踏ん張って上がれる高さの限界だそうです。
 以前は、お母さんがAさんをおぶって、通常の階段から上がり下りすることもあったそうです。しかし、今はもうできないので、Aさんは一人で専用階段を上がり下りしなくてはならないのですが、Aさん自身も徐々にしんどくなっているそうです。

 Aさん家族が暮らす2階は、テーブルやイスではなく、Aさんに合わせて、こたつなどを使った床での生活スタイルだそうです。洋室の床には、クッションマットを敷いた上からカーペットを敷いて、足が痛くないための配慮と冬場の寒さ対策をしているそうです。Aさんは自分の部屋は無いそうですが、自分で上がり下りできる低いベッドのまわりが、自分のスペースになっているそうです。
 洗面所も、Aさんが使いやすい低い位置に取付けた洗面台があり、洗面等に必要な物も、手が届く低い位置に収納しているそうです。トイレは、Aさんと家族の両方で使えるように、洋式を埋込むようにして段差を低くしてあるそうです。ひらめき

s151211e.jpg 浴室は、一般的な浴室より1.5倍ほどの広さのある在来浴室です。しかし1階にあるので、入浴の時は、前記の階段を上がり下りしています。浴槽は排水の関係で、あまり埋込むことができなかったそうで、そのため、Aさんが上がれる段差で洗い場を一段上げて、浴槽との段差を減らしています。浴槽にはAさん一人では入れないので、足を介助してもらって出入りしているそうです。今どきのユニットバスは、脱衣所と浴室の床の段差は小さいのが当たり前ですが、当時の在来浴室で段差を小さくしているのは珍しいです。

 Aさんは、ヘルパーさんなどはまだ頼んでいないので、介助が必要な部分はお母さんがサポートしているそうです。お母さんとしては、何かあった時のために、ヘルパーさんを使えるよう準備などはしておいて欲しいと思っているそうです。いい気分(温泉)
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 まだ、バリアフリーなどの概念が無い時代に、なるべく一人でできるようにと、とても合理的な改修方法を考えて工事されていたことに驚きでした。るんるん

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posted by ki at 20:07| Comment(0) | 建物進行中など
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