2016年01月10日

【建物進行中など】36_それぞれの暮らし方にふれてみる その2


「ばり研通信」179号(2015年10月末発行)の私の連載より、一部、修正して掲載してます。「ばり研」(=ノイエ)は、http://blog.goo.ne.jp/neue-blogです。

 今回は、一人暮らしをしているAさんです。Aさんは、外出には電動車いすを利用して、会社勤めなど日々の生活をしています。今年から住み始めたアパートの自宅は、ヘルパーさんを利用しつつも、一人でもなるべく暮らしやすいよう工夫しているとのことで、そのあたりを取材させていただきました。ペン
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s160110a.jpg Aさんの自宅アパートは、最寄り駅から歩いて10分程の距離です。電車通勤のAさんが利用する最寄り駅は、エレベーターや車いすトイレ等は整備済みです。その駅で、Aさんと取材に同行するノイエのBさんと待ち合わせて、3人でAさん宅へ向かいます。
 駅周辺はお店が少ないのですが、Aさんは駅前のスーパーやコンビニで買い物をしたりするそうです。駅からの道は、表通りではなく住宅地内の裏道を通っていきます。表通りは、歩道は広いのですが、切下げ等による凹凸が多く進みづらいようです。裏道を通るため、途中、2車線の道路を、信号の無い交差点で横断していきます。車の通行量は多くないのですが、左右の状況判断と電動車いすによる横断が、素早くできるAさんだから渡れるのだと思います。ダッシュ(走り出すさま)

 Aさんの自宅はアパートの1階です。アパート入口から比較的近い位置にある30u程の1DKの部屋で、前の住人の方も、車いすを利用していたそうです。Aさんは、この部屋を普通の不動産屋で紹介されたそうですが、その際に、駅から徒歩圏内で車いす対応の即入居可のアパートが他に2つもあったそうです。福祉関係の施設の多いエリアではあるのですが、公的な団地やマンションではなく、一般のアパートでも車いす対応の物件がいくつもあるというのは驚きです。
 Aさんが入居する際には、後述の住むために必要な改修をしています。改修は、Aさんが以前に住んでいた施設とつながりのある大工さんにお願いし、改修費用はさいたま市の住宅改修費給付で賄ったそうです。その大工さんは、車いす利用の住まいなどの改修に慣れている方のようで、Aさんも一緒に考えながら改修を進めたそうです。目

 一般のアパートなので、道路から部屋に至るまでの間に、段差などいくつかのハードルがあります。道路とアパート敷地との間に段差は無いのですが、敷地地面と玄関前の外廊下との間には16cm程の段差があり、ここはスロープ板を渡して行き来しています。
 外廊下は、幅が1.2m程であまり広くないのですが、Aさんはそこを神業的?な車いす操作で細かく移動し、玄関のカギを自分で開け、外開きのドアも自分で開いたうえで、室内へ入れる位置にたどり着きます。ただ、転倒などの恐れもあるので、向かいにあるアパート管理会社の人が、Aさんの帰宅に気付いた時はサポートしてくれたり、天候の悪い日には、ヘルパーさんが来る時間に合わせて帰宅したりなどするそうです。外廊下に転落防止の対策をすると少し楽になるのでは、と話しましたが、共用スペースでもあり、費用負担や誰が造るかとなると…意外に簡単ではないのが現実のようです。
 さらに、外廊下と玄関との間には9cm程の段差があり、ここは製作したスロープを外廊下に固定設置することで、車いすで玄関に上がれるようにしています。ひらめき

s160110b.jpg 玄関ドアは、一般的な外開きのアパートドアですが、クローザーにストッパーが付いてました。アパートドアは防火設備としての常時閉鎖(出入り時のみ開閉)から、開けておくためのストッパーは基本的に付けられません。ですが、あくまで玄関を出入りする際に、手の代わりのドア保持のためだけに、クローザーのストッパーを使う…という判断は、あってもいいのではと感じました。
 その玄関ドアですが、内側には郵便受けが付いています。そのため、実質的に通れる幅はAさんでギリギリで、同行したBさんは手動車いすをこぐ手が通らない狭さです。Aさんは、以前の住まいで、ドアの郵便受けを引っ掛けて壊してしまったとのことで、この取材の後に、不動産屋さんと相談して郵便受けは外してもらったそうです。
 さらに、外開きの玄関ドアは、Aさん一人でも閉められる必要があります。ヘルパーさんと色々考えた結果、写真のように、ドアハンドルにロープをくくっておき、そのロープをAさんが持ちながら室内へ入ることでドアが閉まる方法にしたそうです。玄関土間と室内床との間の段差は3cm程で、電動車いすでそのまま上がれるので、ロープを持ったまま室内まで入っていくことができ、ドアを閉められます。るんるん

s160110c.jpg その玄関土間から室内床へ上がったスペースは、2畳ほどの広さの車いす置場になっています。床には養生シートが張られ、屋外で使う車いすの汚れや雨の水滴などが落ちても大丈夫なだけでなく、Aさんが乗り降りする際に足を滑りにくくする役目もあります。この車いす置場のアイデアは、同じような車いす置場を作っていた方の方法をまねて、大工さんにシートを張ってもらったそうです。

 このような玄関を入ってすぐ正面に2畳ほどの広いスペースがとれるのは、アパートとしては特殊な間取りです。おそらく、前の住人の方が大がかりな間取り改修をしたようで、玄関+ダイニング+キッチン+洗面が、壁の無い一体の広いスペースになっています。Aさんは、このダイニングスペースにテーブルなどを置いていないので、車いす置場以外も広く、移動の障害になるものも無いので、様々に使えて便利そうです。唯一、床がやや滑りやすいフローリングのため、三つ這い(正座の状態+左手)で移動するAさんにはちょっと不便そうです。ちなみに、Aさんは立上がりや移動の手すりはあまり必要ないそうですが、寄りかかりながら立ち上がるための壁が、洗面台脇や車いす置場やキッチン脇などに確保されています。家

 Aさんはスーツで出勤するので、それに合わせた靴や上着を身につけます。脱ぎ着は基本的にヘルパーさんに手伝ってもらうそうですが、一人で出かける時もあり、自分だけで履ける靴も用意して、玄関の車いすで通るのにジャマにならない所に平置きしてあります。雨天時にはカッパを着るのですが、脱ぎ着はさすがに一人では難しく、外から帰って来た時は、ヘルパーさんに脱がせてもらい玄関に干してもらうそうです。外出用の上着や荷物は、車いす置場などに置いたままにせず、和室まで持っていくそうです。時計

→続きは、http://home.kurade.net/article/172241134.htmlです。

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posted by ki at 18:14| Comment(0) | 建物進行中など
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