
先週の休み中に、都内北区周辺の保存建物や公園などを見てきました。最初は、赤羽自然観察公園内にあり「北区ふるさと農家体験館」として使われている旧松澤家住宅
http://www.city.kita.tokyo.jp/hakubutsukan/bunka/gakushu/shisetsu/furusato/です。
元々は浮間地区に1844年に創建された住宅とのことで、旧荒川の氾濫を何度も経験しながらも、平成8年まで、ほぼこのままの状態で実際に住まわれていたとのことです。その後、平成15年から現地への移築復元工事が行われ、馬屋を増築した「幕末から明治時代初期」に近い姿に復元されたようです。各所の部材や仕上げや茅葺き屋根なども、とてもきれいな状態で維持されていて、ディテール含め当時の建物の様子を堪能できます。正面から全景で見ても、その姿というかプロポーションがとても良いのが印象的で、箱棟や軒の「せがい造り」という形式も、住宅としての格式を高めているのだと思います。


縁側は、家族が主に使う手前の座敷は外縁ですが、主に客間として使う奥側の奥座敷は、雨戸を縁側の外側で閉め切る内縁になっています。

暑い日だったので、奥座敷の北側の日影になる縁側では、おじさんたちが将棋を打ったりして良い雰囲気です。体験館として地元の方が様々に使える建物となっていることで、親しみを感じる空間になり、建物自体も活きている良さがあります。


座敷から土間と縁側の方を見ています。天井は梁が見える比較的簡素な形式ですが、10畳の座敷をまたぐ梁や長押はとても立派なせいがあります。畳は、当時の農民という身分だったことで、縁の無いものを再現しているとのことで、天井の造作などもそのような使う人の格を反映しているのかと思います。

土間奥から土間の入口にある大戸の方を見ています。照明が点いている分を補正すると、建物内の本来の明るさはこのような感じで、とても落ち着きますし涼しい印象になります。この大戸は、一間サイズの大きな引戸で、農作物の作業を土間でするための出し入れに便利なように造られているようです。その分重い引戸なので、人の出入りだけの時用に、引戸にくぐり戸?の引戸がさらに付いています。土間は荒木田土のたたきで、モルタルやタイルなどと違って、土の表情と柔らかさがあります。
敷居に渡されているのは、車いすの方用のスロープです。写真でそのスロープの手前に写っているケース内には、大黒柱の下にあったとても立派な礎石が展示されています。写真の左端にその大黒柱が写っているのですが、おそらく尺角かもう少し太いかもです。現在は耐震化のために、見えない部分の基礎は現代の構造になっているそうです。
写真のような感じで、ボランティアの方が建物のことなどを色々説明していただきました。この建物とその雰囲気がとても好きで、それを子ども達にも伝えていきたいという気持ちが、とてもイイです。


土間にあるかまどです。右手前が日常使う二口の「へっつい」というもので、奥の大きなかまどは大量の煮炊きをする時に使うものだそうです。この住宅は、川の氾濫による浸水があるため一般的な座敷の囲炉裏が無いそうで、その代りに土間に囲炉裏を造って火をおこしていたそうです。そのため、このかまどの上から屋根裏に煙が上がるようになっており、現在でも、瓦葺きの屋根などを燻すために火をおこすそうです。
かまどの左側の戸の向こうに見えているのが風呂場で、明治初期まで時代は行水だったのでは、とのことです。

その風呂場の外には、風呂場で使った水を貯めておくための桶が、板が張られている下に造られています。風呂場で使った水を他に再度利用するためだそうで、川があっても低地だったため、水は貴重だったのではないかとのことです。

馬屋は、写真のように軒が深く軒裏がそのまま見えるので、竹で格子状に組んだ茅葺きの下地などが良く分かります。馬屋の軸組は主屋に比べて全然細いのですが、茅葺きだけであれば、これぐらいで支えられるということなんでしょうね。

こちらは、主屋の裏手に別棟で建っている倉屋です。材も細く、土台の無い「石場建て」になっている簡素な建物ですが、その分とてもシンプルになっており、その立ち姿はかえって潔い印象です。
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